代替医療について、1970年代からアンドルー・ワイルを注視し、その著書の翻訳者であり、自らも鍼灸師である上野圭一の著書「代替医療」を中心に、ワイル、渥美和彦の著書を参考にして、まとめました。
■ 代替医療とは
現代西洋医学以外のあらゆる治療法・健康法の総称。中国医療、カイロプラクティク、健康食品から、信仰療法等々その種類は多い。近年、現代西洋医療(以下アロパシーと言う)の技術的、金銭的(財政的)行き詰まりから再評価されるようになり、アロパシーと代替医療を相互に長所・短所を補い合う、と言う「統合医療」へと発展させる動きが活発になってきている。
■ 歴史と時代背景
現在、代替医療は国際的には「CAM:キャム(Complementary & Alternative Medicine) 補完代替医療」と呼ばれています。アメリカでは「Alternative Medicine 代替医療」 イギリスでは「Complementary Medicine 補完医療」と呼ばれていたものが統一されて国際的に通用する言葉として使われるようになりました。CAMはアメリカ、ヨーロッパで独自に生まれてきましたが、ここでは、情報量が豊富で世界的にも影響力が強いアメリカにおける代替医療の再評価の歴史とその時代背景をまとめてみます。
1960年代に発生した日本を含めた全世界の若者の反体制運動は、アメリカにおいては単に「反(Anti]」ではなく「対抗文化(Counter Cultuer)」を模索しました。これは、現代欧米文明の物質主義、細分化された分析主義に対抗するものとして、霊性、野生、シャーマニズム、全体性、持続可能性といった人類が現代文明以前に長年になってきた文明を再評価をすることでした。このような中で、現代文明に取って代わる文明として「代替文明」という考え方に基づき、農業では有機農業、医療では代替医療として、現代文明によって切捨てられた文明が再評価されました。一方、政治の世界からは医療費の高騰と現代医療の効力に疑問をもったフォード大統領は、1977年に「マクガバンレポート」によって、国民にライフスタイルの改善と、医学会に現代医学そのものの思考方法(哲学)を変えるよう呼びかけました。
年代順主な出来事
①1960年代~1970年代中~世界的反体制運動から対抗文化がアメリカで生まれ、ヨーロッパにも波及する
②1971年~1973年~ワイル、シャーマンを尋ね南米を探索。帰国後、住居(アリゾナ)の近くに住むオス
テオパシ-の名医、フルフォードを知り、捜し求めていたヒーラーとして認め、「治癒
について教わる。
③1970年代後半~ワイルは代替医療の第一人者と目されるようになるが、奇異の目で見られることが多か
った。ホリスティック・ヘルス運動がおこる。
④1977年~「マクガバン・レポート」公表
⑤1980年~帯津良一、中医学を学ぶため、中国へ(1982年帯津敬三病院開院)
⑥1983年~ワイル「人はなぜ治るか」を上梓。代替医療が奇異の目で見られることは少なくなってきた。
この頃から、ホリスティック医学協会が各地に設立される。
(1987年日本ホリスティック医学協会設立。会長帯津良一)
⑦1990年代初頭~ハーバード大学助教授デービット・アイゼンバーグが権威ある医学誌に米国における
「非通常医療(代替医療)」の実態調査結果を発表し、医学会に衝撃を与える。代替医
療の実施者は高学歴、白人に多く、その費用は1兆円を超えていた。
⑧1993年~米国立保険研究所(NIH)内に「代替医療調査室」を作り活動開始。2002年補完代替医療セ
ンター、予算200億円、従業員2000人。
⑨1990年代~CAMの用語が認知され始める。多くの大学医学校でCAMの研究、教育が開始され始める。
⑩1996年~アリゾナ大学「統合医療プログラム」実施
⑪2000年~日本統合医療学会設立
■ 代替医療の特徴と利点、問題点
1、特徴
明確な概念として意識していない療法もあるが、全ての代替医療は「自然治癒力(生命力)」を高めることによって治癒を施す、としている。(シャーマンを除く) 心身を一体のものとして、精神性、霊性を重視する。(健康食品を除く)
2、利点
①生活習慣病など、アロパシーでは治せない病気を治せることが多い。
②価格が安い。
③副作用が少ない。
④高齢者医療に適している。
⑤患者の自己決定権、自己選択、自己責任意識を高める。
⑥QOL(命の質)を低下させることは少ない。(例:手術は成功したが障害が残った)
⑦地球環境に負荷を与えることが少ない。
3、問題点
①副作用がある場合もあるが、其れを知らずに安易に治療を受ける人がいる。(例:アガリクスで死んだ)
②健康食品の中には、農薬、ヒ素、鉛、水銀が検出されることがある。
③ワイルのような多くの代替医療に精通した医療コーディネータが少なく、自分の病状に相応しい代替医療に
めぐり合うことが難しいことが多い。
④詐欺まがいの物と者がいる(ある)。
■ アロパシー、徹底批判
アロパシーは人体を化学反応によって動く機械、とみなします。従って病気とはこの機械が正常に動かなくったのであり、その部品を修理又は取り替えることが治療である、と考えています。このような思考からは、人体を有機的な全体としてみることが出来ず、、物質以外の精神性、霊性を認めず、自然治癒力を認めることが出来
ません。以上のことから、アロパシーは健康維持と病気の治療について次のような具体的弊害を生んでいます。
① 3つの過剰によって治療に危険が伴い、治療費が高額になる。
・薬剤過剰使用~生薬ではなく、精製薬を用いるので副作用が多い。時に抗生物質の安易な使用。
・手術過多~時には不要な手術が行われる。人体に対して不遜な態度をとる。
・検査機器による検査過多。時には危険を伴う。
これらのことは、安全より即効を重視する考えを生んでいる
② 病気の治療に思考が埋没し、健康維持、予防医学に対し無関心である。
③ 診療が臓器別に分科され、科目同士の反目が見られる。
④ 他の医療法に対する攻撃的態度。隙あらばつぶそうとする。従って、他の医療法と協力する態度に欠
ける。代替医療に敵対するものであり、医療費が高い原因にもなっている。
⑤ 治療について難解な言葉で語り、患者は健康、病気については素人は口を挟むべきではない、という思考
に陥らせる。医師に対し無条件の平伏を強いる。
■ 日本の代替医療
日本の代替医療は欧米と比べて遅れている、と言われるその理由。
①明治の医療制度改革の時、全て近代西洋医療を採用し、漢方等のその他の全ての医療を排除してきた。
②国民皆保険制度により、国民はこの医療制度に満足すると同時に、この制度が認める近代西洋医療に不満
を抱かなくなった。
③ライフスタイルが欧米化してきたとはいえ、平均寿命は世界一であり、アメリカと比べて生活習慣病は少なく、
政府、国民に危機意識が少ない。
④特に改めて、「代替医療」と認識しなくても、漢方薬は市販され、規制があるとはいえ、鍼灸、整骨院等伝統
的な治療法を受けることが出来る。
⑤対抗文化、と言う背景を持たないので、医師、学者の活動に一般の人々の後押しがない。
⑥アメリカには19世紀初頭から半ばにかけて、アロパシーとその他の医療との激烈な主導権争いがあり、
また、同じ頃、ポピュラー・ヘルス運動(いかなる治療であれ、本人が有効と認めたものについて施術の資格
を与えるべきだ、としてホメオパシーを支持した。)を経験した。従って、医療の多元主義、の思考は受け入
れやすかった。しかし、日本の場合は、明治維新後西洋崇拝志向が根強く医療の多元主義、と言う思考は
芽生えなかった。