超ミネラル水ショップ   読書ノート  マーク・A・コルビー著 日本の医療制度論                              

                 
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日本の医療制度論  マーク・A・コルビー著  2007年 183P

序章

日本の現時点での医療システムは評価が高いが、近年中に確実に財政的に行きづまる。~2020年68兆円  2025~2035年にはGDPの25%になる。

日本の医療制度に関心を持つ理由~日本経済への影響が大きく、更に世界経済に大きな影響がある。

                       世界一のアメリカ医療に関する能力を活用すべきだ。

医師、医療ビジネスマン、官僚内でも統一した見解は得られなかった。

Ⅰ、問題の定義

1、人口高齢化の問題
 ・2020年までに人口の4分の1が65歳以上になる
 ・65歳を超えてから死に至るまで,平均して生涯に割り当てられた医療費の80%を消費する
 ・90歳代および100歳代の年齢層の人口の増加に伴い,さらに大きな問題となる可能性がある。

 <見解A> 高齢化社会には多くの利点がある。

・日本は,高齢者たちを雇用し,彼らが活躍できるように最大限の努力を払わなくてはならない。
・高齢者は経験豊かで、若い人たちの力に十分なりうる。

<見解B> 日本の人口高齢化は深刻な構造的問題を引き起こす。

・日本の全体的な競争力は,産業的および革新的な生産性の双方から低下する
・社会保障政策を抑制しなくてはならない。
・この問題は,2025年前後をピークとして,40年近くも続く

2、医療制度の財政健全性

・日本の医療費はGDPの8%。しかし,この数値にはOTC薬,健康診断,周産期のケア,または診療報酬外で提供されるサービスが含まれていない
・日本で実際に費やされている医療費はGDPの12%に近いと考えられる。

<見解A>医療に資金を費やすことで経済は活性化する。

・日本のGDPの20%もしくはそれ以上を医療に費やすことは,必ずしも悪いことではない。実際,適切に資金が使われれば,非常に多くの雇用が
生まれ,世界中で販売できる技術を開発することが可能になるからである。
・医療のためにお金を使うことで,経済全体を活性化できるかもしれない。

<見解B>医療費の増加は日本の経済を停滞させる。

・歴史上,日本のような苦境に直面した国はなかった。
・4分の1の国民が,別の4分の1の国民から徴収した税収入に依存することになる。のである。
・税負担の増加によって,競争力のある先進国とは見なされない水準にまでさらに低下する。

3、病院の財政健全性
日本の全病院の65%は赤字で運営している。日本の医療システムは,この状況を象り切れるのだろうか。

<見解A> 病院は破産寸前である。医療は利益を追求するものではない!

a)病床数を削減することで供給を制限し,病床利用率と効率を改善する,
b)医療施設がより多くの利益を得られるように,業務の価格を上げる,
c)病院で使用する商品およびサービスなどの経費を削減する。

<見解B>資金は十分にある。病院は利益を上げないために多くの余剰資金をピンはねしている。

4、医療システムの生産性

・日本の病院の平均在院日数は27日。米国では3日,西欧諸国ではおよそ6日。
・日本の病床は170万。米国の病床数は,90万床
・日本の医療費のおよそ30%は薬剤費が占めている。米国、西欧諸国は約11%しか占めていない。

これらの数値は,日本の医療システムは医療提供の生産性において他の先進諸国に後れをとっていることを強く示している。

・日本は乳幼児の死亡率は世界でもっとも低く,世界一の長寿国である。
・ほぼすべての国民が基本的な医療を受けられることが保証されている。

人口に対する医師の割合(人口1億2776万人に対し医師免許所有者24万人)は,他の多くの国と同様に またはそれ以上にすばらしいものであり・
これらの数値は,日本の医療の生産性が予想以上であることを示している。

<見解A> 日本の医療の生産性はとても高い。

・日本の医師は,1日に平均60人から70人の患者を診ており,米国の医師よりも少ない給料で働いている。(米国の医師は1日当たり10人から20人の患者)                           ・日本では,最新の医療技術を効果的かつ広範に導入している。
・ 一般的に,日本の病院では予約の必要はないことが多い。一方で,欧米諸国では,患者は予約のために数週間は待だされ,さらに専門医に診ても
らうまでには数週間待だなくてはならない。
・ 病床数が多いことで,相対的な治療コストは欧米諸国の病院よりもはるかに低い。そのため,日本の医師たちは患者をより長期間病院に入院させ
ることができ,日常の定期的なケアをより効果的かつ安価に行うことができる.

<見解B>日本の医療の生産性はお粗末である。
a)治療費および治療期間についてより高い透明性を確保する
b)情報技術を活用して,効果的な治療を提供する施設を公開する,
c)良い治療を実施する病院を優遇し,質の劣る治療を行う病院を淘汰する。

 これらのアイデアは,どちらかというと生産性の問題に対する直接的な方策のようだが・現在の医療制度に携わるほとんどの医療関係者たちが・
 いかにすばらしく生産的な医療がすでに行われているかをやみくもに自慢しているために,それらもまた実現しそうにはない.厚生労働省と日本医
 師会は特にこの自己満足さにおいて罪深い。どちらの組織にも,生産性を分析し,そこから得たデータによってシステムを改善するために必要な透
 明性を実現しようとするための動機がないのである。

日本の医療システムに携わる人々が生産性の高さにそれほど自信があるのなら,それが正確に評価され,数値化されることを受け入れるべきである。
彼らが何らかの表沙汰にできないことを隠していると憶測することには無理があるだろうか?

5、在院日数

1990年には日本の病院の平均在院日数は約45日だった。これは,現在では約36日にまで低下している。これを米国の3~4日,西欧諸国の5~8
日と比較してみよう。

<見解A>長期入院は日本にとって構造的に不可欠である。
・家父長的な人間関係
・インフラの未整備、在宅ケアーがしにくい
・病院スタッフが少ない

<見解B>日本の病院は多くの利益を得ようとして在院日数を延長しようとしている。
・出来高払いの為
・他国より5倍も長いことは、医学的に不要である。
・医原病の可能性が高まる。

包括支払い方式に変えるべき。在宅ケアーの必要な人は、ナーシングホームを検討すべし。

多くはすでに免疫機能が低下している.さらに ほとんどすべての患者は 万
 抗生物質による治療を受けており,感染の可能性がある何百ものホストに

 スーパーバクテリアがアクセスできる環境が生まれている。もし人類を壊
 滅させるバクテリアを作成する方法を生み出そうとするのであれば,近代
 の病院はそれを実施するための施設となるだろう.そのような場所に,よ _
 り多くの利益を得るために患者をできるかぎり長期間入院させることは,
 患者と社会全体の双方に対する犯罪行為である。

  日本は,在院日数を短縮させるためにあらゆる努力を払わなくてはなら

 ない。そのためには,財政的,医学的および社会的な義務を果たさなくて

 はならない。在院日数を短縮するために現在の出来高払い制度を廃止し,
 包括支払い制度を導入するべきである。完治するまでの期間に在宅支援を

 受けられない患者に対しては,病院ではなくナーシングホームがその答え

 となるだろう。

6、医薬品の消費

・日本では,他の先進国よりも著しく大きな割合の医療費が医薬品に費やされている.他の先進国の9%から12%に対して,現在ではほぼ20%にまで減少している。
・医薬品市場は,日本の人口の高齢化とともに,上昇を続けているのである。

<見解A> 日本が多くの医薬品を消費しているのは合理的なだけではない。医療の質および医療管理のコストを改善する日本特有の慣習である。

・大量使用は利益が動機となっている。

<見解B>日本の医薬品の消費はまったく不合理である。あまりに多くのお金が制度に費やされ、全体的な治療の質に悪影響を及ぼす。

理由①患者が期待する。②医師がそのように教育されてきた。③多くの人々が金を儲けることが出来る

抗生物質を安易に使用しすぎる。~耐性菌
副作用

他国並みに15%まで削減できたら、6兆円節約できる。
調剤と処方を分離すべし
医師に金銭を与える製薬会社を罰すべし。

7、医療技術とその活用法

<見解A>技術は効果的に活用されていない

政府はコストがかかるため、最新技術を導入しない。
医師は生涯教育制度、専門医試験制度、医療過誤訴訟がないため、ほとんどの医師は、最新技術を使いこなせない。

<見解B>技術は効果的に活用されている。

・日本では冒険的で高価な治療ではなく、最大の費用対効果が得られると見込まれる診断と治療に資金を費やす。
・日本では技術より人材に投資される。

8、医師教育

・日本には80の医科大学があり,大雑把にいって毎年8000人の医師が医科大学を卒業していく。
・2004年には,初めて政府が学会の規制に着手し,医師を管理するための手段として学会を活用するようになった。
・学会の内部に教育および資格審査のための委員会を設置し,これらの委員会が会員の生涯教育に関する方針を公表することも求めている。

<見解A> 医師の生涯教育に関する現在のシステムはうまく作用している。すでに疲弊しきったシステムに新たに無駄な負担を課すべきではない。

・本当の知識は医師としての生涯にわたって診る,何百,何千もの患者との日常業務から得られる
・この役割は,学会,製薬企業のMR,そして政府のガイドラインが担っている。
・学会の会合に参加することと,学会が医師に提供する情報を組み合わせることは,医師が一般的な医療と専門分野の双方における
最新の知識を維持するための効果的な手段である。
・さらに医学の進歩は,最終的には製品化され,その後,十分な訓練を受けて認定されたMRの部隊が販売を促進することになる。

<見解B>生涯教育を早急に実施するべきだ。

 1)医師免許を維持するための机上の教育時間を最小限にする。嘘もしくは虚偽の書類を作成した場合には,罰則を伴う犯罪とみなす。
 2)教育コストを節減するため,インターネットを活用した教育と試験をより広く導入する。
 3)各医師の専門に基づいて,すべての医師に定期的な試験を課す。試験の内容は最新の進歩を中心とする。
 4)すべての医師の教育に間するデータをインターネットを通じて一般に公開する。

 医師に学習させるための唯一の方法は,定期的な試験を前提とした学習を義務化することである。
 試験に失敗した医師は,医療の現場から排除されるべきである。

9、日本の医療文化
・日本の基本的ともいえる文化的特徴は,かつての農民による地域社会での共同性と,いわゆる武士たちの階級制度が組み合わさったものだといえる.
・一見すると欧米的なシステムだが,中身は古来の日本的文化のままという二面性をもったシステムとなった。

<見解A> 欧米の科学と日本文化が融合し,効率的かつユニークな医療システムが生まれた。

欧米的な見方からすると,日本の医療システムを推し進めている人間間係はあまりにも非組織的で,続制がとれていないように見える。
ところが,日本的な見方をすると,日本のシステムには社会的に要求されるチェック・アンド゜バランスの仕組みが巧妙に組み込まれていることがわかる。
たとえば・自分より若い医師が必要な医学知識を学ぶだけでなく,患者を適切に診察するように指導することは年長の医師の仕事である。熟練の医師の知識や技術が若手に受け継がれていく。

先輩後輩制度を通じて育まれる羨ましいほどの労働倫理と強いモラルである。
代々受け継がれるこの労働倫理と強いモラルによって,患者たちは自然に医師の指示を聞き,従順に従う慣習が出来上がった。

日本は欧米型の医療とともに東洋の全人医療や漢方治療なども取り入れている。
一般には十分に理解されでいないものの・日本において質の高い医療システムが成立したのは,東洋と西洋の科学と文化がミククスされたところにある。

<見解B>日本文化の特徴には,医療の質を低下させ,経済状況を悪化させる

世界中の医療システムが直面している大きな問題の1つは,強い権力をもつ医師のエゴイズムである。
医師というのはその職業の性質上,神に近い存在になってしまった。これは文字通り人の生死の鍵を医師が握っているからでもあるが,
日本では,この基本的な事実と日本文化の要素が組み合わさり,説明責任
がなく,透明度の低い,そして場合によっては医療の質を低下させるような非効率的なシステムが生まれてしまった。
この問題の根源には,前述したように伝統的な先輩後輩制度がある。そこでは固く結びついた居心地のよい上下関係が医師たちの問に生まれる。

医療現場で発生する重大な事故や問題の背景には,このようなお互いにミスを隠蔽するという先輩後輩関係の質が蔓延している

日本の社会においては,重大な事故やミスが発生したときにその責任がどこにあるのかを見つけ出し,問題を改善するという仕組み_ほとんどない。                     

日本の患者の従順さは,世界でもトップレベルの従順さは確かに利点でもあるのだが,このような状態が長期間続くと,
第三者の専門家による監視でもないかぎり,医師はほとんど絶対的な権力を握ってしまう 

現在の状況を改善するためには,日本政府は次のようなことができると思われる。

1)時期を逃さずに自発的に告発した関係者には免責保障をすることで,医療ミスの表面化を促す。
2)学閥以外の大学や病院から医師を雇った病院には税金を優遇し,先輩後輩制度を弱体化させる。
3)医療ミスを隠蔽した医師に対しては,医師免許を自動的に剥奪する。
4)電子カルテ制度を導入して,隠蔽行為を困難にさせる。
5)すべての疾病に関するわかりやすい情報をインターネットで公開し,患者が自分自身の病気の診断や治療に積極的に関わることを奨励する。

         

Ⅱ、経済に関する討論

1、出来高払い”対“包括支払い

・出来高払い制度は,病院および医師が行うサービスに対して,直接報酬を支払う制度である。たとえば,医師が患者を骨折と診断すれば,その医師は,患者(もしくは保険会社)に診断,治療材料および治療にかかった費用を請求することができる。最大限の医学的治療が行われるための経済的なインセンティブを提供

・包括支払い制度では,医師は骨折の診断に対して均一に定められた報酬を受け取ることになり,事前に決められている均一の料金で治療を行う
 包括方式の支払い制度は,拡大し続ける財政的負担の肩代わりを求められたメディケアおよび民間保険会社からの強い要求によって,1980年
代初頭に米国で生まれたものである。 経済的に最小限の医学的治療が行われることを推奨

・出来高払い制度は医療財源を無駄使いしており、包括支払い制度は最低限の医療財源しか用いられないようにしていると,それぞれ主張している。

・2003年4月に厚生労働省は,DRG/PPS方式の制度を日本の80の国立大学病院を対象に導入した

<見解A>DPCは日本の医療を破壊する。

・日本政府は,患者にとって最善だと思われる医療が行われるために質の高い医療行為に対してより高額の診療報酬点数を定めることで,
 質の高い医療を促進するための巧妙な計画を考案した。対照的に この制度のもとでは,どのような場合でも自由に医師を選択することができ,
 診療報酬にかかわらず,医師が患者に最善の医療を行うことが認められている。

・現在の出来高払い制度は,すべての国民が公正かつ公平で,適切な治療を受けられることを保証している。

・DPCによって、金銭的に困難な状況にある患者が,必要な,また,時には生命に関わる治療を受けられない状況が生じることは避けられないだろう。
・DPCの実施によって想定されるのは,民間の医療保険に加入する人々が増加し,公的および民間の健康保険の共存が進むことである(混合診療)。
・多層的なシステムが生まれることになる。現在の公的制度は,このような計画のなかでは,最底辺に位置することとなり,低所得層を対象としたものになるだろう。
このような階層化したシステムは,日本社会の基本的原則,そして現在の医療制度の原理原則とはまったく逆行している。

<見解B>DPCの実施は経済的な現実である。

・出来高払い制度によって,世界最長の在院日数という結果が生じた。医療費の30%が医薬品に費やされることになった。その理由は,病
院は薬を売って金儲けをしているからである。

・出来高払い制度の根本的な問題は,自分たちの仕事を効率的に行い,優れた臨床結果を得た医師たちに対するインセンティブがまったくないことである。
対照的に この制度のもとでは,患者をできるかぎり長期間にわたって病気のままにしておくことでより多くの金銭的なインセンティブが得られるように調整されてい
るのである。
・その他の問題は,医師と病院の質に対するチェック・アンド・バランスの仕組みがないことである。医療施設の査察および認定制度はまったく機能していない。

・専門医の認定および資格授与制度は,学会の上層部が医師を評価し認定するにあたってすべての権力を握っている「先輩後輩」制度のために,
明治時代から旧態依然のままである。 

2、営利追求か非営利追求か

歴史的には,日本の医療システムは,本来的に漢方医療に基づいた治療を行う,個人経営の昔からある漢方医のネットワークに基づいたものであった。
1948年までは,そのような診療所はすべて個人経営であり,利益を目的としていた。第2次世界大戦後,新たに定められた法律によって規定された医
療が導入されたことに伴い,日本政府は強い経済的なインセンティブを導入することで,国家としての医療制度を確立した。この制度は,次のような前
提に基づいている。

1)すべての病院,診療所,および医師は,均一のサービスを均一の費用で提供する。
2)医療従事者は社会に奉仕するために医療を行い,すべての医療法人は非営利事業として運営する。

厚生労働省(旧厚生省)は診療報酬を有利にするという魅力を利用して,この大規模な独立している集団を丸め込んだ。厚労省は,
この方針に従うことを選択した医師と病院に報酬を与え,それ以外の医師と病院からは財政的な権利を剥奪した。時間が経つにつれて,
事実上は制度全体が国家の医療計画のもとで動いていたのである。

<見解A>医療は利益を目的とするものではない

・利益が動機となることで,医師が患者と取り交わす社会的な契約が破られ,医療は徹底的に崩壊するだろう。

・日本の医師たちは,同等な教育を受けた他の熟練した労働者たちよりも低い賃金で働いている。 医療を行うことはたいへん大きな名誉であり,
前述のように医師を経済的に優遇することは必要ではなく,基本的な生活の需要を超えているべきではない。

<見解B>医療制度は利益のためである。

・利用率によって診療報酬が均一になるという事実は,日本の医療の基本的な動機が利益であることを明確に示している。 

3、市場の力

・市場の力は大きな役割を果たすということはほとんど疑いのないことだと思われるが,多くの人々はその役割を最小限に抑えるべきだと考えている。

・過去数年間にわたって,市場の力に対する反対意見は減少してきており,現在では,実際に市場の力を推奨する新しい規則が導入されている。現在,日本医師会,
政治家,および社会主義志向の国民の凄まじい憤りにもかかわらず,市場の力が勝利を収めようとしている。(現時点2008年、その反省の感情が起きている・松下)

<見解A> 市場の力は人口高齢化によって現実的なものとなる。

・生き残る病院を決めるための唯一の合理的な方法は,患者に情報を公開して,彼らに治療を受ける病院を選択させることである。市場の力によって,
病院は品質システムを導入し,競争が促され,勝利するか,閉院するかという選択がせまられることになる。

<見解B>医療に市場の力を受け入れてはならない。

・工場で働く人々よりも高額な治療費で企業の重役たちに専門的な治療を行うことは,現行の憲法が制定されて以来,日本の良心として続いてきた社会的な契約
に背くことになる。利己的に医療の不公正分配を許容することは,社会全体に悪影響をもたらすだろう。

Ⅲ、  政治に関する見解

1、日本の医療における政治構造

1.厚生労働省
2.日本医師会
3.財務省

各団体の問にみられる競争の本質は,財務省を共通の敵とする,厚生労働省と日本医師会との弾力的関係によって,もっともよく示されている。
国民は政治上の一勢力ではまったくないのである。

<見解A>医療の政治的権力構造のバランスは健全である

<見解B>政治の権力構造は破綻しており,対処しなければ大きな災いをもたらす。

・日本医師会が医師たちに対する勢力だということは,ほぼ独占であることを意味している。
・日医は必要な変化に対して抵抗しており,それは会員の特別な財政状況を維持し,会員たちが,医師免許の更新に対する要求や,病院認定制度の実施,
または患者のカルテの開示に関わる規制などといった面倒な規制に煩わされないようにすることであり,それによって訴訟を取りげさせたり,
会員の財政的な既得権を守ろうとすることなのである。

2、患者団体

患者の利益弁護は,日本の医療では比較的新しい進歩である。最近においては,1990年代前半の薬害エイズ事件が記憶に新しい。
何千人もの患者がHIVに感染する結果となった,政府と企業との間で行われた記憶に鮮明なこの共謀行為は,日本で患者団体が積極的に活動を始める
きっかけとなった。生き残った患者とその家族らは団結して,首尾よく,そして繰り返し,政府に自分たちの地位を受け入れさせたのである。

薬害エイズ事件以降,1000を超える患者団体が日本で組織された。その対象は,がん患者から,がんも含めて特定の疾患に関連する患者に至るまで,
多岐にわたっている。ほとんどの患者団体は自分たちで活動資金を調達しており,その多くが関連のある疾患の研究の支援に参加している。

最大の会員層は,自分たちの主張に費やす時間と資金のある膨大な人数の高齢者たちである。
 

<見解A>患者団体は質の高い医療に対する唯一の本当の支持者である。彼らの意見を受け入れるべきだ。

日本の政治家,官僚,そして日本医師会は,自らの行動によって,個々の患者の最良の理解者として行動することを望まないこと,もしくはできないことを証明した。医療の場において,患者団体がさらに大きな声を上げることは,必須の課題となっている

患者団体が関心をもっていると考えられるもっとも明白な領域は,技術の導入と医師の適性である。

新しい医療技術の導入が緩慢にしか進められないことは悪評となっている。

1)患者団体の代表者を中央社会保険医療協議会(中医協)に参加させ,医師と業界の代表者と同等の発言権を与える。
2)患者団体の代表者に彼らの疾患に関連する製品の承認と診療報酬に関する意見を述べさせる。
3)厚生労働省は患者団体のホームページを後援する。ホームページで公関する情報は,患者にとって重要な問題を理解できるように厚労省と日医の会員が監視する4)患者団体は団結し,医療問題に関わる政治家の投票記録を監視する。選挙時に啓発運動を行う。
5)活動資金を確保するために患者団体は自分たちの疾患に関連する医薬品や機器を製造および販売する企業に働きかける。
6)インターネットを用いて,日本およびその他の国で受けられる治療についての医学的情報を患者が自由に閲覧できるようにする。

<見解B> 患者団体は反動的で無知であり,本質的な問題を理解していない。
 医療政策は専門家の手に委ねるべきだ。
  

3、医療産業

製薬産業,医療機器・サプライ産業,診断産業,および医療サービス産業なども含まれている。

<見解A>医療企業は偏向しており利益のみを追求している。したがって,医療の討論に参加させることさえ認めるべきではない。

政府と医療専門家は,潤沢な資金をもった強力な企業が政策に影響を与えないよ引こ,あらゆる手段をとらなくてはならない。

<見解B>医療の将来は企業の新技術への投資に大きく依存しており,医療討論における重要な要素である。

 日本医師会と官僚がこの議論におけるすべての権力を掌握したなら,政策と資金の分配は不公平なものとなる

Ⅳ、法律に関する見解

1、医療過誤

最近になるまで,日本では医療過誤訴訟を起こすことなどは,実際にはとても考えられないことだった。国民は最悪な事例だけに関心を寄せていたため,
医療過誤はまれにしか起こらないものと思っていた。伝統的に 日本国民は医師と医療システムを強く信頼してきたのである。
彼らは,次のような別の要素から訴訟が増加したと信じている。

a)国民が医療の透明性をより要求するようになった,
b)医療システムには本質的で擁護できない欠点があることの理解が浸透した
c)医療情報へのアクセスが増加した,
d)法律専門家たちが,患者が医師を訴えることを積極的に支援している,

米国と比較して日本の医療過誤の興味深い点は,日本では損害賠償の金額が比較的小額であることである。

<見解A>医療過誤の解決を訴訟に頼る人々は本当の日本人ではない。

医療過誤訴訟は欧米から輸入された考えであり,日本には適さない。 

<見解B>医療過誤訴訟は質の高い医療と透明性を実現させる唯一の方法かもしれない。

医療過誤に対処するための合理的でバランスのとれたシステムは,医師に最新の医療技術を理解させ,品質システムを導入するための金銭的なインセンティブを
提供することになるため,医療システムと医師の双方にとってたいへん健全なものとなるだろう。

医師がすべての権力をもち,患者だけがその結果に苦しむという,崩壊したシステムを修正しようとする選択肢を無視することはできない。

2、インフォームド・コンセント

医療の用語では,インフォームド・コンセントは,患者が治療やその他の医学的な処置についてのリスクとベネフィットを知らされ,
それに対して合意することを意味している。

現在,欧米諸国で意味するところのインフォームド・コンセントは,
<患者が自分自身の治療に対する意思決定のプロセスの一員として参加し,その判断に対してより責任をもつ>
ということである。

日本においては,インフォームド・コンセントは,知識階級においては議論され討議されているものの,実際には浸透しているようには見えない。

<見解A>インフォームド・コンセントは日本の文化と繊細さに適合しない。

・日本の医療においては,医師は診断して治療法を決定する際に患者の意見を受け入れないことが一般的である。
・欧米式のアプローチは科学の複雑さを説明しようとし,さまざまな治療の選択肢を統計的に分析しようとする。
 欧米の医師がすることは議論されるべきである。というのも,医師のように訓練,知識および経験などの後ろ盾がないにもかかわらず,
 重要な意思決定をしなくてはならない患者に,問題を説明する時間と資源を本質的に無駄にしているからである。
 ほとんどの場合には,この種の医療行為は無駄であり,役に立たない。そして,実際に患者が,危険を招くことさえもある治療上の意思決定を
 下す理由に十分になりうるのかどうかは疑問である。

<見解B>インフォームド・コンセントは成熟した医療システムを実現するためには不可欠である。

歴史的な文脈からすると,インフォームド・コンセントという概念は比較的新しいものである。しかし,その歴史が新しいにもかかわらず,
ほとんどの欧米諸国ではインフォームド・コンセントは当然のように行われている。
しかし日本は例外であり,日本の医療システムの歴史と,1950年代初頭に日本がほぼ全体的に再建したことを考慮すると,おそらくそれは
驚くべきことではない。対照的に,日本の医療が再生した同時期には,米国の医療はすでに近代医療と呼ばれるものに向かっていたのである。

他の先進国から見ると,日本でインフォームド・コンセントが浸透していないことは驚きである。現在の欧米の慣習からすると,インフォームド・
コンセントが実施されていないことは,人々が自分自身の健康,つまり,すべての人の人生において,もっとも重要な問題を決定する権利を明らか
に侵害するものである。また,インフォームド・コンセントが行われないことで,その技術と知識が非常に低い水準へと低下するために実際に神
のようではないとしても,医師たちは半ば神のような存在となり,患者の貴重な生命を意のままにしているのである。

インフォームド・コンセントが浸透していないことの最大の問題は,日本の医師に対する訓練および医師免許の要件が非常に疑わしいこと,
またはそれらがまったく実施されていないことである。内容の伴った研修制度が実施されていない。医師の生涯教育は存在していないに等しい。
医師免許は生涯にわたって有効である。これらの訓練と教育の問題を組み合わせることは,病院の認定制度,もしくは医療過誤訴訟の脅威などによる,
チェック機構やバランス調整の仕組みがないということを意味する。これらのことを理解しているのなら,医師たちが自分の診断および治療について決定すること,
つまり自分の運命を決めることを,どうして全面的に委ねることができるだろうか?

しかし,日本はインフォームド・コンセントを実施する方向へと容赦なく進んでいる。規制を整備することは,比較的容易な部分である。
困難な点は,日本医師会の文化と患者の態度を変えることである。意義のあるインフォームド・コンセントが行われるために次のことが行われなくてはならない。

1)患者には医師と病院に対して実効性のある医療過誤訴訟を起こすための能力が求められる。併せて,特に医療過誤に対する法的な特権を与える。
医療過誤訴訟の脅威およびインセンティブの二元的な理由から,インフォームド・コンセントを実施するようになる。

2)医師は,継続実施を前提としたより良い訓練を受ける。医師がインフォームド・コンセントについて無知であることが暴露されることを懸念するのなら,
どんな医師も進んでインフォームド・コンセントを促進しないだろう。

3)患者のカルテ開示をより一層促進する。患者のカルテに記載された情報は,医師ではなく患者のものであるべきである。インターネットを通じて,
より多くの医療に関わる情報を閲覧できるようにする。

・インフォームド・コンセントを浸透させるためには,現在のシステムに構造的な変化が必要である。その変化のなかには,医師たちがより信頼され,
 患者たちがより医師たちを信頼できるように,透切な医療過誤訴訟の仕組みを進化させることも含まれている。医師に対する,より厳しい教育そして
 免許更新の要求もまた実現しなくてはならない不可欠な変化である。

3、カルテの開示

現在の日本の法律においては,患者のカルテは医師もしくは病院の資産である。患者もしくはその家族は,自分たちの診療記録の情報について何らの
権利ももっていない。病院に患者のカルテを開示させることのできる唯一の法的手段は,裁判所による命令である(細注:現在ではカルテをはじめとす
る,すべての「診療記録」の管理,開示などの規定は個人情報保護法のもとで運用されており,各種医療機関は,患者本人から開示請求があった場合には,
原則これを開示することが義務付けられている)。

カルテの開示を要求する国民の抗議への対応として,政府は最近いくつかの行動をとった。日本医師会が,患者のカルテを開示することは
病院にとって財政的かつ機能的な負担だと主張したため,政府は小額の診療報酬点数を自発的にカルテを開示する病院に加算するようにした。
病院はまた,カルテを複写する際に相応の費用を患者に請求することが認められている

現在,電子カルテを導入するための運動が進んでいる。病院開係者たちは,カルテが電子化されれば,いつどこでもそれを閲覧できるために ある日,
患者たちがどの病院にも行くことができるようになることを危惧している。

電子カルテが普及すれば,患者がより自由に施設を移ることが可能になり,検査や手続きが繰り返される必要がなくなることで,
治療コストを節約できるようになるだろう。また,カルテが電子化されることで,過剰な薬物療法や医療ミスを減少させることができるだろう。

<見解A>カルテの開示は,患者,病院,そして医療管理の全体的なコストに悪影響を及ぼす。

医師は,患者に集中することができずに カルテに記載する内容についてほとんど口を閉ざすようになるだろう。数年前にカルテに記入したどんな事柄についても,医師が格付けされ判断される誇大妄想的なシステムが生まれることになるだろう。 

これまで医師は絶対に正しいと考えていた患者を混乱させ,怒らせることさえあるかもしれない。

患者のカルテを開示するかどうかについての判断は,医師に委ねられるべきである。

電子カルテのデータベースを作成することで,すべての人々が絶えず監視される,独裁主義的な環境が促進されることになる。
そのようなステップは,優秀な医師を追い払うことになり,システム全体の効率を低下させるだろう。

<見解B>カルテを容易に閲覧できるようになれば,医療の透明性,信頼性,そして効率の向上に大きく役立つ。
       プライバシー保護の問題に対する技術的解決策はある。

患者のカルテに記載されている情報は,患者,もしくは状況によってはその家族のものである。
他人の医療記録を所有するという考えは,医師が神だと考えられていた時代へと逆行するものであり,発展的な社会においては侮辱的な概念である。
だれが患者の健康に問する情報を所有するかという倫理的な問題に加えて,さらに情報を利用できるようにすることは,他にも多くの利点がある。

医師もしくは病院が,患者が他の病院にカルテをもって行き,他の医師にそれを見せるかもしれないことを知っていれば,良い記録をつけて,
最新の治療を行うことのインセンティブは,最初の医療提供者に対してより大きいものとなる。
専門家としての能力のない医師は,他の医師たちに知られることになり,最終的には再審査委員会による再教育を受けることになる。
悪質な医療過誤が発生した場合には,より新しい開示システムによって,不満をいうべき手段を患者に与えることになる。

電子化したデータを記録することで,医療チーム全体が,すべての患者のカルテにアクセスできるようになる。それによって,より良い,そしてより多くの
コミュニケーションが交わされ,その結果として,医療ミスが減少し,より効果的な治療が行われることになる。蓄積されたデータベースのなかから
データを閲覧できるようになれば,医師は異なった病気と治療法をより効果的に検索できるようになり,また,統計的に関連するアウトカムを伴った,
最善の医療を見分けることができるようになるだろう。

患者のプライバシーが,非常に現実的で垂要な問題だということに疑問の余地はない。だが,この問題は医師がカルテを問示しないことの言い訳
 として頻繁に用いられている。

患者のカルテは,患者が求めるときにはいつでも閲覧できなくてはならない。実際に患者がカルテを閲覧することは,法律によって認められた権利であるべきだ。
そうすることで,患者が自由に病院を移ることができ,現在存在する秘密を白日の下にし,無益な医療から保護されるようになるだろう。このようなステップはまた,
医師が新しい治療法を学び,最新の情報を得ることを促進するだろう。

4、医薬品の販売とプロモーションコード

2001年に 日本の製薬企業は医師に対する接待を大幅に縮小するための自発的な行動基準を制定した。この基準にはある種の柔軟性は存在するものの,
刑務所行きになることの恐怖によって,実際に贅沢な接待は行われなくなり,MRが医師に提供するサンプルの量は大幅に減少した。

プロモーションコードではありとあらゆる接待を医師に提供することを実質的に禁止している。製薬企業のMRは1杯のコーヒーを公立病院の医師
に奢ることさえできないのである。
また,MRは自社の製品に特有の情報のみを提供すること以外には,他の関連情報を提供することは認められない。

<見解A> プロモーションコードは浅はかで,考慮の足りない計画だ。

<見解B>熟練したMRをより効果的に活用しべきだ。

MRが四六時中医師の言いなりになっていたなら,MRが女性からゴルフの招待にまで及ぶ特別な接待をしたなら,MRが長期間にわたって
これらのすべてを十分に行ったなら,医師は自分の患者にMRの会社の製品を処方するだろう。
このような理由から,適切でない薬が患者に処方されていたことは事実である。これらの接待によって,患者は必要ではない薬を与えられていた
のである。

教万人のMRと,彼らが行う贅沢な接待には多くの経費がかかっている。結局は,これらの経費は患者のもとに降りかかるのである。

5、許認可制度

製品の安全性と有効性を確保するための規制は表面的には定められているものの,それはまた政府がいくらか内密の目的を達成するための理想的な方法でもある。たとえば,これらの規制によって,国内の輸入業者や卸業者のような,ある種の利害関係者の権利を保護すると同時に輸入業者から,国内で製造された製品を
優遇することができるのである。

<見解A>近年の法改正は国内の製造業者と卸企業を保護し,新技術の市場への導入を妨げるために実施された。もっとも不利益を被るのは患者である。

新しく定められた規制の最終的な効果は,企業が法的な要求事項を満たすために必要な従業員数を増加させることである。
また,その結果として,規制に関連する業務を下請業者に委託することが制限されることになる。
最終的には,それによって卸企業の地位は保証されるだろう。しかし,この規則はシステムの根本的な問題には言及していないため,
日本の医療をより安全なものにするという,当初の目標を実現することはできない。

規制の改正の目的が,新しい医療技術が日本に導入されることを制限し,遅らせることにあるのなら,大きな成功を収めることになる。

<見解B>最近の法改正は一層の透明性と安全性をもたらす。また,明確な効果がない製品が承認されることが減少することでコスト管理にも効果的である。

承認における低レベルの仕事のために多くの効果がない製品が承認されてきた。危険な製品が承認されたために患者にリスクを抱え
させるような場合もあった。

製造業者もしくは輸入者は,適切な訓練を受けた品質保証責任者を設置することが求められる。品質保証責任者の仕事は製品が適正に試験され,
欠損がないことを確認することである。

安全管理責任者の設置も必要となる。安全管理責任者の責務は,製品を回収するような事態が発生した場合に患者の安全を守るために対応することである。

さらに各企業のプロセス全体が問題なく実施されるように独立した審査官が必要である。

Ⅴ、 特定領域に関する討論

1、介護保険制度

日本政府は,高齢者に対する在宅医療サービスの提供を優先的に進めている。この計画の背後にある考えは,高齢者たちが病院に入院することを制限し,
彼らが自宅で医療を受けられるようにすることで,医療制度の負担を軽減させることである。その目的を達成するために政府はいわゆる介護保険制度を
創設したのである。

<見解A>介護保険制度は有益である。

・社会が高齢化するにしたがい,高齢者には支援が必要になるということである。

・介護保険制度には多くのホームヘルパーが必要となることから,多くの人々,主として女性たちの雇用を生み出すことが可能となり,
生産的な納税者たちに変えることができるだろう。

<見解B>介護保険制度はコストがかかるだけで,効果がない。

第一の問題は,給付額があまりに低いことである。そのため,個人や企業が経済的な利益を得ることはできないだろう。

第二の問題は,ホームヘルパーに対する質の高い訓練が不足していることである。

a)給付水準を上げることで経済的に成立するようにする。
b)すべてのホームヘルパーに対する訓練,試験および認定を義務化する.
c)ホームヘルパーを雇用する企業に対する認定制度を導入する。
d)高齢者が虐待されたり,制度の犠牲にならないようにするためにチェック機構を設ける。

2、救急医療

日本の救急医療が他の先進国と比べると非常に遅れていることをあっさりと認めている。この格差の1つの理由は,もっとも基本的な治療でさえも医師のみが
行うことを法律が定めているため,救急救命上が,緊急の状況でできることが大幅に制限されていることである。

<見解A>救急医療は優先順位の問題である。

医療に対する資金がますます逼迫しているなかで,日本は本当に莫大な額の資金を,より効果的な救急医療を行うために必要な,高規格救急車,
ヘリコプター,救急用の治療機器,そして地域病院にとてつもなく高価な救急救命センターを設立することなどに費やすべきだろうか?

<見解B>現代社会においては質の高い救急医療を行うべきだ。

3、がんと化学療法

米国と日本におけるがんの治療法には,いくつかの注目に値する相違点がある。日本では低用量化学療法が支持されており,大量化学療法に対する強い偏見があることが指摘できる。その理由についての多くの見解がある。

大量化学療法があまり実施されていない理由には,診療報酬が低く,大量化学療法の技術についての知識がある腫傷学者たちよりも,
外科医たちが主としてがんの治療に責任を有していることも含まれている。

<見解A>日本は適切ながん治療を実施している。

実際のところ,大量化学療法のほとんど堪え難い副作用を我慢できるほんのわずかな患者にとってさえも,完治できる確率はそれほど高いものではない。
また,完治することのない非常に多くの患者たちは,残された日々を不要な痛みと苦痛とともに生きなくてはならないのである。

好むかどうかにかかわらず,医師は,人々の生死,健康または病気に影響する可能性のある判断を下す際に,実際に神のように振る舞っているのである。
彼らはそのような判断を非常に多く下している。これが事実であれば,なぜがんの治療はその他の医学的な判断と異なっていなくてはならないのだろうか?

<見解B>日本は節約の為に低量抗がん剤法を採用している。

そのような見解はないはずだ(松下)

4、ホスピス・ケア

<見解A>ホスピス・ケアは非常に必要とされている。

<見解B>ホスピス・ケアは必要ない。

         

Ⅵ、医療産業

1、日本の製薬産業

日本では,他国の10%から12%という数字と比較して,医療費全体のほぼ30%を医薬品に費やしている。

政府は,国の保険償還制度に比較的容易に参加できるよ引こして,製薬企業の成長と発展を促した。しかし,その政策のために知らず知らずのうちに
医薬品が過剰に処方されるようになった。また,医薬品を患者に大量に販売することによって医師たちが利益を得ていることが明らかになったとき,
その効果は雪玉式に膨らんでいったのである。

<見解A> 日本の製薬産業はダイアモンドの原石である。健全な成長を促し,国際的な競争に参加できるようにすべきだ.            

日本には,医薬品,仕事,そして輸出がいまだに必要である。多くの国内企業が救いを求めていることは間違いないが,
日本の製薬企業は比較的強い形勢を維持しており,彼らを救えることは間違いない。国内の製薬企業を救うための努力から生じる利益が,
そのためのリスクを上回ることは間違いない。そのためには,次のことが必要である。

1)少なくとも当面の間は薬価の削減を止めて,資金が企業に流れるようにする。
2)国内で製造された医薬品には税金および保険償還価格を優遇する。外国の政府は不当だと弾劾するかもしれないが,これは国の緊急事項であり,
 当然として扱われるべきである。
3)国内の製薬企業に対して税金および保険償還価格を優遇することで,企業間の合併を促す。ある意味では,合併は企業の技術および専門性
  を向上させるために必要である。
4)DPCの導入へと向かう動きを止める。仮にDPCが実施される際には,医薬品は除外するべきである。

医療費からわずかな資金を削減するために,日本の製薬産業を今犠牲にすることは,かえって悪い結果をもたらすことになるだろう。

<見解B>日本の製薬産業は瀕死の状態である。楽にしてあげるべきだ。

ほとんどの日本の製薬企業には,今日のグローバルな舞台で活躍している巨大な外資系企業と競争する力はない。
世界的シェアと研究開発費の点からいって,その差は圧倒的なものである。政府が医療費の抑制を注視していることから,
年間に医薬品に費やされる費用から1兆円以上を削減せざるをえない。このようなコスト削減政策が全面的に実施され,薬価がさらに削減されれば,
医薬品の販売から利益を上げ続けるための最後の砦は崩されることになる。包括支払い方式の実施は必然的であり,病院が過剰に医薬品を処方することが
財政的な問題から抑制されるようになれば,いくつかの注目すべき例外を除いて,日本の製薬会社が隆盛を誇っていた時代は終焉を迎えるだろう。

今日のグローバルな経済時勢においては,政府が保護する企業が生き残るための余地はもはや残されていないのである。

2、医療機器および医療材料産業

保険償還価格を設定する方法だけが,他国の市場よりも,日本の医療製品の価格がはるかに高い理由ではない。
また,病院および医師からの内在的な要求が,日本でビジネスをする際に高額なコストがかかる要因ともなっていた。複雑な流通網,医師への贅沢な接待,
法外なサービスの要求,規制の多大な負担,これらのすべてのことは日本に独特のものであり,他の国の市場では考えられない高額なコストが生じる要因となった。

コスト削減の視点から,政府は現在,参照価格制度に着目している。この制度は,価格調査を国外の市場,特に製造業者の存在する国の市場にまで
拡大するものである。製造業者が日本で事業を展開するには高額なコストがかかると激しく批判している一方で,政府は,じわじわと追っている資金の減
少に対してより一層の関心を寄せているのである。

<見解A>企業は不当に批判されている。政府は技術が医療システムにもたらす価値とコスト削減効果を理解していない。

医療機器および医療材料に費やされるコストは,日本の医療費全体のうちたった7%でしかない。しかし,厚生労働省はほとんどの時間を,日本でビジネスを
展開するためにかかる高額なコストを考慮せずに,参照価格制度という不合理なプロセスを導入することで,これらの製品のコストを削減するために割いているようだ。

<見解B>医療機器の価格は長期間にわたって高過ぎた。世界的な標準に引き下げる時期である.

日本では,医療機器の価格を高く設定し,その価格を維持するために製造業者,卸企業,病院,そして医師との間での共謀行為が継続的に行われてきた。
多くの技術が,日本では他国よりも3倍から5倍ものコストがかかることも事実である。

3、診断産業

早期に発見できれば,がんなどの多くの病気は,後から発見するよりも,より効果的に治療することができる。また,理論上は,早期の治療は費用対効果がより高い。

定期的な検診が実施されており,その費用を雇用主が支払ったり,個人が自費で支払うケースが増加している。日本では毎年100万以上の検診が実施されており,
ほとんどの検診センターが完全に営利目的で運営している。 

製薬産業と同様に体外診断検査における進歩の大部分は,売上のほとんどを国内市場に頼っている国内企業ではなく,巨額の研究開発費と,
世界中の市場シェアを誇る多国語企業からもたらされている。

<見解A>体外診断検査は過去に乱用されてきた。現在のトレンドは,医療システム全体にとって肯定的に捉えられる。

<見解B>現在の診断産業のトレンドは患者のケアに荒廃的な影響を及ぼしており,結局のところ制度の財政的負担を増すことになる。

包括支払い制度を実施する前に政府は体外診断検査に対して適切な保険償還を行わなくてはならない。病院で検査を実施すればよりコストがかかるが,
検査を実施することの意義を認識した,(病院および院外検査施設のための)二重価格制度が実施されなくてはならない。日本で包括支払い制度が一般的になれば,適切な診断およびコスト体系を伴った体外診断検査が,需要に応じて行われるようになるべきである。

4、医療サービス産業

日本における医療サービスは,病院,医師,または患者にケアに直接的に関連する補助的なサービスを提供する営利を目的としたビジネスだと定義することができる。 

2002年には,看護師による静脈注射が法的に認められている。しかし,最大の法律の変化は,2001年に施行された介護保険制度である。この法律は,民間の営利企業が,医師の注意深い目から離れて,高齢者の家庭で介護支援を行うことを認めるものである。

大きな障壁もまた存在している。その障壁の大部分は,患者のケアに関わるすべての事柄における医師の裁量権に関係している。

民間企業は効率を高めることができ,より安い価格で質の高い介護を提供できると主張している。民間企業の参入が想定されており,
現在議論されている領域には次のものがある。

a)病院経営への参入
b)基本的な病院業務の外部委託
c)在宅での注射薬治療

<見解A>規制を緩和して,民間企業がより良い,そして安価な医療を提供できるようにすべきである。

次のことを含む,すべての要素が,高い収益性が見込まれる事業を生み出す要因として存在する。

 a)医師を含む,すべての医療専門家から構成される,技術を有し,十分な教育を受けた組織化された労働力。
 b)治療費を支払う能力があり,それを望んでいる高齢者たちの医療に対するニーズの増加。
 c)ビジネスの出現を後押しするための十分なスキル(例:技術的なスキルなど)をもった団体もしくは個人の増加。

5、卸業界

⑤卸業界
  1980年代後半を境として,卸企業の数は急速に減少している。その理由としては,企業買収や合併,事業譲渡,
また場合によっては自主廃業や倒産などが考えられる。
 卸企業数の合理化の背景にある原動力は薬価の引き下げだった。

卸企業の多くは,製造業者に対しては実質30日から60日の支払い
期間に基づいて支払いを行っているのに対し,6ケ月もしくはそれ以上の信
用期間を病院に与えている。

卸企業はまた,病院の在庫管理部門としての重要な役割も担っている。  

<見解A>卸企業は無駄であり、直ちに改革が必要。 

<見解B>卸企業は数千人もの雇用を生むだけでなく,製造業者と病院に価値のあるサービスを提供している。
 

Ⅶ、解決策はあるのか?

1、厚生労働省の重要計画
 

厚生労働省の計画には,医療費の削減や医療の質の向上などが目標として含まれ,抜本的に日本の医療体制を変えようとしてい
るようである。その計画の詳細は以下のとおりである。

1)日本医師会の力が及んでおらず,利害関係の少ない大学病院に対してDPCの実施を義務づける。

2)国・公立病院を民営化して,包括支払い制度の経済的効果に着目させることで,地方自治体や国の補助金に頼らないようにする。

3)診断群分類点数票を包括支払い制度と組み合わせ,病院によって診療報酬が多様になるようにする。当面はこの革新的な制度は在院日数だけを
 対象とし,毎日計算される診療報酬を基本とする。在院日数の短い患者を扱う病院はより高い日率を受け取り,在院日数の長い患者のいる病院
 は低い日率になる。ここでのポイントは両者とも同じ金額を受け取るということである。

4)病院の多様性を拡大し、医療の質の指針にまでその影響が及ぶようにする。
  

5)徐々に医療の質を向上させ,新しい診療報酬の効果を上げるためにできるだけ多くの大学病院以外の病院にもDPCを拡大する。入院期間が
  もっとも短く,もっとも質の高い医療を提供する病院だけが生き残ることになる。入院期間がもっとも長く,医療の質も悪い病院はやがて廃業
  に追い込まれることになる。まさしくダーウィンの自然淘汰である。

<見解A>
 
厚生労働省の計画はすばらしい。
 
 DPCは,出来高払い制度に見られるようなコストの抑制だけでなく,医療の質そのものを向上させることになるはずである。 DPCは,現在は
 在院日数によって算出しているが,病院の質を向上させるために簡単に仕組みを変えることができる。次のことが包括評価の計算に今後含まれるべ
 きである

a)病院の認定状況,b)医師の研修期間,c)すべての医療関係者に対する生涯教育,D)患者のカルテ開示。
 
 もちろんこういった変化だけでは,医療制度が含有している問題や莫大な医療費がもたらす財政的負担を改善できるわけではないが,少なく
 とも制度全体が正しい方向に動き出すことだけは確実である。

<見解B>

 DPCは失敗に終わる。この制度を利用する病院は,医療費を消滅することができず,最終的にはDPCは日本ではうまくいかなくなることが
証明されることは間違いない。その理由としては

1)DPCは,既得権益をもつ団体から十分な同意を得られないまま強行われた。このような幅広いイニシアチブに基づく制度は,利害関係者の
  同意なしに成功することはない。

2)大学病院で働く医師の報酬は比較的低い。さらに研修や病院の引締めの結果,すでにコスト削減の感覚をかなり身につけている。 DPCの導
  入は,単に医師の事務的な仕事を増やすだけであり,患者の治療法や動機などにはあまり変化はないだろう。

3)大学病院の医療スタッフは,職場の財務管理からかなり離れた環境にいるため,患者を治療しているときに通常はコストのことは考えてい
  ない。包括評価制度を導入したからといって,治療法を変える医者がいるとは考えがたい。

4)大学病院の収支の一部は,国からの補助金や寄付金によるものである。大学病院全体が,収支のかなりの部分を外部からの資金に頼っていることになる。

5)大学病院はもっとも困難な症例を扱うため,一般的な病院を代表しているとはいえない。したがって,大学病院で集めた治療方法や在院日
  数に間するデータを,その他の多くの病院に応用する意味はほとんど ない。集積したデータは,DPCにおいて何ら利用価値はなく,よって
  後になって間違いだったと気付くことになる。

6)もっとも重要なのは,DPCが失敗し,民間の病院にこの制度が導入されないことを望んでいる団体が多く存在するという事実である。

2、民間医療保険

1980年代後半から,日本でも民間の医療保険に加入できるようになった。
混合診療の誕生である。

 <見解A> 混合診療は邪悪の権化である。
 
裕福な人々が,貧しい人々よりも高い水準のケアを受ける資格があるという考えは,日本の社会的契約の原則と相反するものである。

 <見解B>

混合診療の誕生は必然的であり,前向きに受け止めるべきだ。
  

3、アウトカム研究

<見解A>アウトカム研究は価値あるデータを患者に提供する唯一の方法だ

<見解B>アウトカムは正確さに欠け難解すぎる。ほとんどは使い物にならない。

4、医療機関の広告規制

<見解A>広告の規制緩和は自然の流れであり、患者に有利な情報を提供する。

<見解B>広告の規制緩和は医療専門家の品位を低下させ、患者の誤解を招く環境を生じさせる。

5、医師免許の更新

6、医療施設の認定制度

7、医師の生涯教育

8、病院診療部の業務委託

9、高度先進医療

1990年代後半に導入されたが、公的保険には適応されなかった。

現在、高度先進医療として100を超える技術が承認されているが、広く認知されていない。

されているものの,いまだに広く認知されていない。

 <見解A>高度先進医療は新技術の墓場であり、質の高い医療に背くものだ。

<見解B>診療報酬への全面的な依存を変えることが出来れば、高度先進医療は全ての医療関係者に価値をもたらす。

10、特定機能病院

11、病院事業管理者の資格

12、クリティカルパスの標準化

Ⅷ 外国人労働者の受け入れ問題

Ⅸ 結論と推奨事項

医師会、官僚、医療産業、患者団体の中で、医師会と官僚連合の政治力が強い。

医師と患者の信頼関係の欠如。

1990年代から比べると、著しい変化あり~病院認定制度、カルテの開示、DPFの導入、政治が医師より患者に目を向け始めた。

社会主義的な医療制度が、より資本主義的な医療制度に向かいつつある~2重構造のシステム(富裕者と貧困者向けに分裂したシステム)

今後5年以内に実現

1)大学病院は実現を妨害するだろうが,DPCは最終的に導入され,医療制
  度全体に拡張される。医師の報酬はこれから除外される.

2)診療報酬制度を通じて現在実施されている,ケアの提供に対する政府の
  中心的な管理は(クリティカルパスのような)標準方法に置き換えられる。
  企業の重要な仕事は,この規準に製品や技術を登録することになる。
3)厚生労働省は,現在のDPC制度においてすでに提供されている変動係
  数を用いて医療の質の指針を導入する。区別する最初の領域は,日本医
  療機能評価機構,またはIS09001認定となる。その他の品質評価指針も
  これに続く。これらの指針を遵守しないまたは遵守できない病院は,ま
  ずは診療報酬の削減に苦しむことになり,最終的には病院事業から撤退
  する。
4)当局の承認を受けた高額な治療と医療技術は,より一層高度先進医療技
  術に分類される。その結果,それらは直接保険償還されず,またDPC
  の一部には組み入れられない。
5)保険会社は承認されたものの保険償還されない医療を補償する,補足的
  な医療保険の提供を始める。
6)臨界点を超えた人口が公的保険でカバーされていない治療の保険を受け
  るようになれば,多くの病院がそのような治療を実施して,患者に喧伝
  するようになる。
7)生き残った「非主流」病院には2つの傾向をもつようになる。双方とも,
  診療報酬の削減からもたらされるものである。大部分は非急性期の長期
  ケアセンターとなる。その他の病院は,完全に国のプログラムから退出し,
  裕福で民間保険に加入している患者をターゲットとするようになる。

 <コメント>

少子高齢化、経済の停滞、格差社会が、今までの公平な医療制度を崩壊させる、と言う。現に東京の都心部の裕福な人が多く棲む地域には

そのような人を対象とした医療制度をもとにした病院が存在すると言う。(例~赤坂山王病院)

アメリカの後を医療分野でも追うというのだろうか。

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